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2011年5月

ライプツィヒのマーラー祭とその映像

今、マーラー没後100年を記念した「国際マーラー音楽祭」がライプツィヒで行われている。ドイツを中心に英米墺蘭からも優れたオーケストラと今を時めく指揮者たちが集まって、マーラーの全交響曲を含む主要作品を演奏するという催しだが、ありがたいことにその全演奏会のヴィデオを中部ドイツ放送(MDR)のサイト(↓)で見ることができる。
 http://www.mdr.de/mahler
音楽祭のスケジュールは次の通り。

5/17,5/18 交響曲第2番
 シャイー指揮ゲヴァントハウス管
5/19 交響曲第3番
 サロネン指揮ドレスデン・シュターツカペレ
5/20 交響曲第10番(クック完成版)
 メルクル指揮MDR(中部ドイツ放送)響
5/21 交響曲第7番
 ネゼ=セガン指揮バイエルン放響
5/22《葬送》、《大地の歌》
 ルイージ指揮コンセルトヘボウ管、アンナ・ラーションAlt、ロバート・ディーン・スミスT
5/22 交響曲第10番よりアダージョ、交響曲第1番
 ゲルギエフ指揮ロンドン響
5/23《亡き子をしのぶ歌》、交響曲第5番
 ギルバート指揮ニューヨーク・フィル、トーマス・ハンプソンBr
5/24 交響曲第6番
 ジンマン指揮チューリヒ・トーンハレ管
5/25《花の章》、《少年の魔法の角笛》、交響曲第4番
 ハーディング指揮マーラー室内管、モイカ・エルトマンSp
5/26、5/27 交響曲第8番
 シャイー指揮ゲヴァントハウス管ほか
5/28 交響曲第9番
 ガッティ指揮ウィーン・フィル
5/29 交響曲第8番
 シャイー指揮ゲヴァントハウス管ほか

今一番脂ののってそうな指揮者たちを揃えた、よい顔ぶれだと思う。
演奏はこれまでのところいずれも熱演ぞろいで、はずれがない。
個人的にはクック完成版の10番、《葬送》、《花の章》といったところが映像付きで体験できるのがとてもありがたい。
それにしても、《千人の交響曲》を中1日おいて3日立て続けに演奏する、てのもなかなかすごいね。

ブージーとシャーマーの楽譜ネット公開

イギリスの楽譜出版大手ブージー・アンド・ホークスBoosey & Hawkesが、20世紀以降の作品のスコアをネットで「閲覧用にperusal」公開しはじめた。入口はこちら↓

http://www.boosey.com/cr/perusals/

作品数は466点、作曲家を数えたら70人。

聞き覚えのある名前をAから拾っていくと、
ジョン・アダムス、ルイス・アンドリーセン、バルトーク、バーンスタイン、バートウィッスル、ブリテン、カーター、コープランド、ドアティ、デル・トレディチ、ディーリアス、ドラックマン、フィンジ、ヒナステラ、ゴリホフ、リンドベルイ、マクミラン、マルサリス、マックスウェル=デイヴィス、メレディス・モンク、ムソルグスキー、プロコフィエフ、ラフマニノフ、ラウタヴァーラ、ライヒ、ロレム、ラウズ、ストラヴィンスキー、トムソン、タネジ、クセナキス。
そうそうたる顔ぶれだ。

「現代もの」のはずなのにムソルグスキーは何故、と思ってクリックすると、《展覧会の絵》がラヴェル編とアシュケナージ編のオーケストラ編曲で出てきた。なるほど。ラヴェル版はともかく、アシュケナージ版というのは面白い。ネット上で閲覧するだけだから使い勝手が良いとは言えないが、タブレット端末などを使えば案外「鑑賞のお供」としてポケットスコア代わりに使えるかも。

実はすでにアメリカの大手シャーマーSchirmerもスコアのネット公開を行っている↓

http://digital.schirmer.com/

こちらもほとんどは20世紀以降の作品で、バッハやモーツァルトの名前も見えるが、編曲が新しいということのようだ。オーケストラ作品はスコアの全部、小編成の作品は数ページの抜粋を見ることができる。

作曲家数を数えると85人。個人的にはアンタイルのジャズ・シンフォニー、コリリャーノの交響曲、それに音大の図書館にもないウィリアム・シューマンの交響曲3番などがみられるのが嬉しい。

――などと書いておいてなんだが、実はシャーマーのサイトは今の私の環境ではちゃんとスコアを表示してくれない。前に何度か訪れた時にはちゃんと見られたのだが、今は妙に文字化けしたテキストのようなものがだらだらと表示されるだけ。pdcというファイル形式を使ってるようで、ブラウザがきちんと反応していないのかもしれない。

ともあれ、シャーマーとブージーという現代ものの2大出版社がスコアの公開を始めたというのは、新モーツァルト全集のネット公開に匹敵する快挙ではないかと思う。次はショットか?

世紀末ウィーンのヒットチャート(補足):リスト

前項(↓)につづいて、フォル・ジュルネでの講演の補足です。
今回の音楽祭全体のテーマは「タイタンたち」。ポスターにはブラームス、リスト、シェーンベルク、マーラー、リヒャルト・シュトラウスという5人の作曲家が描かれています。

講演では、ウィーン・フィルでとりわけ演奏頻度の高かった3人、ベートーヴェン、モーツァルト、ブラームスについて具体的な曲目を確認し、一方でマーラーとR.シュトラウスについては指揮者としての演奏傾向などをご紹介しました。また、「タイタン」のうちベスト20に名前が出てこなかったシェーンベルクについて、その事情を考えてみました。

こうして話を進めた結果、演奏頻度で9位につけていたリストについては、ほとんど具体的な曲目に触れることがないまま終わってしまい、「リストはどうした」というご質問をいただくことになりました。内容を構成していくうえで配慮が足りなかったと反省しております。

1880年~1919年にウィーン・フィルが取り上げたリスト作品の上位は次の通りです。

1 交響詩《マゼッパ》 8
2 交響詩《前奏曲》 7
3 メフィスト・ワルツ 5
4 ピアノ協奏曲第1番 4
5 ファウスト交響曲 3
5 詩編18編 3

交響詩2曲が上位を占めているのは、この時代まだ「新ドイツ派の盟主リスト」というイメージが強かったということかもしれません。《前奏曲》は、今でもかろうじて標準的なレパートリーに残っていますが、《マゼッパ》はほとんど演奏されなくなりました。なぜそうなったのか、興味深いところです。

ちなみに私自身はリストの交響詩では《タッソー》が好きなのですが、残念ながらこの時期のウィーン・フィルでは2回しか演奏されていませんでした(; ;)。

世紀末ウィーンのヒットチャート(補足:ベートーヴェン)

今年もラ・フォル・ジュルネ音楽祭でお話をさせていただきました。その際、せっかくご質問いただきながら手元に資料データがなかったこともあって適切にお答えできなかった点がありましたので、この場を借りて補足させていただきます。

講演のタイトルは「世紀末ウィーンのヒットチャート」。具体的には、1880年から1919まで40年間のウィーン・フィルでどんな曲が演奏されたか、その回数を調べる、というものです。

作曲家の演奏回数ダントツ1位はベートーヴェンで40年間に306回。会場ではその上位の曲目を一覧でご覧いただきました。

1 交響曲第5番(運命) 24
2 交響曲第3番《英雄》 22
3 交響曲第7番 21
3 交響曲第9番 21
5 交響曲第8番 19
6 交響曲第4番 14
6 交響曲第6番 14
6 ヴァイオリン協奏曲 14
9 交響曲第1番 13
10 交響曲第2番 12
10 序曲《レオノーレ》第3番 12

これについていただいたご質問は、「ピアノ協奏曲」が出てこないが、何か事情があるのか、というものでした。これに関しては、特別な理由があるとは考えておりません。
その場では上記ベスト10(11曲)以外の曲をご紹介できませんでしたが、そのリストの下は次のようになっています。

12 序曲《レオノーレ》第2番 9
12 《エグモント》序曲 9
14 《プロメテウスの創造物》 8
14 《コリオラン》序曲 8
14 序曲《献堂式》 8
17 序曲《レオノーレ》第1番 6
17 《シュテファン王》序曲 6
17 《エグモント》付随音楽 6
20 ピアノ協奏曲第5番 5
20 ピアノ協奏曲第3番 5
22 《フィデリオ》序曲 4
22 序曲《命名祝日》 4
22 ピアノ協奏曲第4番 4

20位にピアノ協奏曲の5番(皇帝)と3番が同率で並び、その下に4番がつけています。
この3曲を合わせると計14回で、ヴァイオリン協奏曲と同数になります。
このデータから、私はベートーヴェンのピアノ協奏曲そのものの人気(需要)が少なかったわけではなく、同じくらい人気のある3曲でその需要が分散されたのだろう、と見ています。

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